お茶の科学(サイエンス)

茶成分の生体膜に対する親和性(2)


静岡県立大学 食品栄養科学部

中山 勉


 前回、茶カテキン類のうちEGCgやECgなどのガロイル基をもつ物質が生体膜のモデルであるリポソームに対する親和性が高いことを述べました。
 今回はその理由について私たちが考えていることをお話しします。
 EGCやECなどのカテキン分子はC環の3位の位置に水酸基を持ちます(図1)。これは分子構造のほぼ中央に位置することもあって、脂質に対する親和性を大きく低下させていると考えられます。
 一方ガロイル基はベンゼン環に水酸基を三個持ち、水溶性を増加させるように見えますが、EGCの3位の水酸基にエステル結合しEGCgになると、エステ ル結合の周辺が疎水領域になると考えられます(図1)。図2はEGCgの立体構造を3D表示したものです。ごらんのように、EGCgは中央の疎水領域が突 き出したような形をしています。富士山に例えると頂上の雪の白い部分が疎水領域で、水酸基が広がったすそ野の色のこい部分が親水領域を形成していると考え られます。私たちはリポソーム溶液にEGCgやECgを加えた場合、脂質二重層のどこに位置するかを調べました。その結果、二重層内部まで深く入らず、表 層近くでとどまっていることを示唆する結果を得ました。
 以上のことを総合すると、EGCgやECgはその疎水領域を下にして(頂上に例えたのに下に向けるのは少し変ですが)、くさびのように脂質二重層に入り込むものの、親水領域は二重層表面に残って、外部の水に接しているのではないかと考えることができます。
 九州大学の菅野道廣先生(現熊本県立大学)のグループは茶カテキンがコレステロールの吸収を低下させることを動物と胆汁酸ミセルのモデルを使って証明し ました。この効果もEGCgとECgの方がEGCとECよりもはるかに高く、ガロイル基の存在によってできた疎水領域がコレステロールと相互作用している ことを示唆しています。
 油っこい物を食べた後でお茶を飲むのがよいというのは、今回お話ししたカテキン分子の化学的な性質と関係しているのかもしれません。

(なかやま つとむ)              月刊「茶」2001年4月号より

 


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